第10回目のお話 泡の如く
2月の初日だというのに午後の日差しは柔らかくて久々に手袋なしで歩けた。こんな日はボーッとしてしまう。まるで何も学んだことがない昔のように難しい事柄からできるだけ離れたいと思っている。虚ろだ。
「この世は泡のようなもの」
と言われるけれど、本当にそんな感覚。自分が宙を漂う一つの泡であって、それは美しい虹色になんか輝いてなくて、様々な顔をして様々な心を持った泡。今までに犯してしまった罪の数々を、これからどのようにでも変容可能な未来を抱きかかえたまま薄グレーのまま漂っている。
そう思えて仕方なかった。
泡はやがて消えて無くなる。この世のありとあらゆるものが消えたところにただおひとり鎮座するのが創造主であるが、この創造主のみを崇拝するのがイスラーム教徒なのである。
実にスッキリわかりやすい宗教ではないだろうか。そして好むと好まざるに関わらず万物はそのお方に従っている。
こんな風に考えているとふっと楽な気持ちになってくる。
まだ安心して漂っていてもいい。
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