アブさんの日本滞在記 その2

仲間に助けられての日本の暮らしは続いていた。衣類はもっぱらどこかの古着屋で調達することが多かった。安くてサイズぴったりのジーンズが見つかり履いていた。
ある日、腰のあたりが痛かゆいなと思っていると、その不快感は日増しにひどくなり、皮膚が化膿して出血してズボンにまで染み渡るほどになってしまった。生まれて初めての出来事にアブさんは恐れおののき、仲間に付き添われて病院デビューした。
診察を終えた医師は何か説明していたがやっぱりわからない。とりあえず処方された薬を塗り、絆創膏を貼って様子を見ることになった。

アブさんが家で休んでいると、心配して訪ねて来た友だちがアブさんの患部を見るなり顔をしかめて言った。
「アブさーん、これひどいよー。これエイズだよ、きっと。」
これを聞いたアブさんがまに受けて打撃を受けたのは言うまでもない。
アブさんはショックのあまり数日間寝込んでしまった。はるばるやって来た日本で、何も得ていないうちに、自分は死ななければならない。哀れな自分を思い、布団の中でおいおい泣いていた。

やがて薬が効いてきて数日後にはほぼ回復した。アブさんはエイズじゃなかった!アルハムドリッラー。
しかし、彼はそれ以来どんなに貧しても古着を身につけることはしなくなった。
(古着と皮膚病との因果関係は不明のままだが)。

続く… 

【 散策 神社へ向かう道の枝垂桜は満開を迎えて】


 

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