第9回目のお話 スーダンからの電話 その2 (ジャラビーヤ)

 スーダンの男性が身に纏ってる白い長衣をジャラビーヤという。これに白いターバンを巻くのがごく一般的な装いである。冠婚葬祭何かにつけて集まることの大好きなスーダン人だが、宴の際にジャラビーヤを着た男たちがずらっと並んで踊る光景は圧巻だ。
このジャラビーヤ、真っ白でどれも同じに見えるが、実はクオリティにも差があり、貧富の差はそこにも表れる。糊付け洗濯したてのジャラビーヤを羽織り、香水を振りかけてターバンを乗せて文字通りパリッとして出かけるのは気持ちいいものだと察する。
 先日主人と電話中誰かが主人に近づいてきて数分話していた。電話に戻った主人が説明してくれた。
「今の人は隣人でとても貧しい。家族も多くて食べることで精一杯。ジャラビーヤがもし余分にあれば、どうか恵んでくれないか。」と言ったらしい。
そこで主人は、
「何枚かあると思う。洗濯して綺麗になったら持っていくから。」
と答えたらしい。

毎日身につける衣服がなくて仕方なく分けてもらいに行く隣人。自分もたくさん持ってるわけじゃないのに、躊躇なく上げてしまう主人。
私はこの小さな話に感動して心が温かくなった。私はスーダンにいたときこんな場面にはしょっちゅう出くわしていて慣れていたはずなのだ。なのに今なぜ?
ジャラビーヤはたった一枚の衣服だが、これが動くときそれを手放す側と受け取る側の双方が神様を忘れていないから、またそう思えるから私は胸を熱くしてるのかもしれないととても単純に思った。

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